はじめに
「今すぐ始めないと損ですよ」「御社のマップ順位、圏外になってますよ」——集客の営業電話を受けたことがある経営者は、少なくないと思います。
「何かやらないといけない気がする」という焦りと、「でも本当に効果があるのか」という不安が同時に押し寄せる、あの感覚。
今回は、僕が実際に受けたMEO業者の営業をきっかけに気づいた「投資を決める前にやるべきこと」について書きます。MEOに限った話ではなく、チラシ営業でも広告代理店の営業でも、ビジネス以外の場面——保険や金融商品、通信サービスといった日常的な営業でも——通じる話です。
そもそもMEOってなに?という方へ
まず前提として、MEOについて簡単に触れておきます。
MEOとは「マップエンジン最適化(Map Engine Optimization)」の略で、Googleマップや地図検索で自分の店舗を上位表示させるための取り組みです。「沖縄 ジム」「那覇 ランチ」などと検索したときに、マップ上で自分の店舗が目立つ位置に表示されるかどうか——これがMEOの効果として分かりやすい。
地域に根ざした店舗ビジネスをやっている方にとっては、確かに関係がある施策です。だから営業電話がかかってくる。需要があるのは事実なんですよね。
「御社のマップ、圏外ですよ」——営業電話の内容と、僕がとった行動
ある日、支援している店舗に向けて、MEO対策業者から営業の連絡が来ました。その店舗では集客ツールの選定なども僕が担当していたため、営業資料の共有を受けながら話を聞くことになりました。
内容をざっくりまとめると、「Googleマップの上位表示対策・Googleビジネスの運用代行・クチコミ対策・LP制作・予約システムの構築……それらをパッケージにして月数万円で提供できます」というものでした。機能の数だけ見れば、なかなか充実した内容です。
そして営業担当者はこう言いました。「○○というキーワードで検索すると、御社のお店は圏外になっています」と。
営業を受けた日の夜、僕は実際にそのキーワードで検索してみました。
結果は、圏外ではありませんでした。
念のため数日後にも調べてみましたが、やはり圏外ではない。
「なぜ事実と異なる情報が出てきたのか」——意図的に危機感をあおろうとしたのか、使っていたツールの精度に問題があったのか、単純な確認不足だったのか、真相は分かりません。ただ、どの可能性であっても「この情報をそのまま信じて動いていたら、判断を誤っていたかもしれない」という事実は変わりません。そして、現状認識の精度に疑問が生じた時点で、その業者への信頼は大きく揺らぎました。これは、サービスの採用を見送る十分な理由になります。
自分で調べるのにかかった時間は、10分もありませんでした。その10分が、契約するかどうかの判断を分けた。
機能が多い提案=良い提案ではない
仮に「圏外」の話が正確だったとしても、僕は契約しなかったと思います。理由がもう一つあります。
提案内容に含まれていた機能の多くが、支援している事業の現状には不要だったからです。
予約システム、Instagram連携、LP制作……どれも単体で見れば価値のある機能です。ただ、その事業の集客フローや現状の課題と照らし合わせると、「今すぐこれが必要か」と問われれば、大半はNoでした。
まとめてパッケージにして月数万円——と言われると安く聞こえますが、不要な機能のために毎月お金を払い続けるなら、費用対効果は悪い。
「盛りだくさんの提案=自分にとってお得」ではありません。自分の事業の前提を踏まえたとき、「この中で本当に必要なものがどれほどあるか」。そしてさらに重要なのが、必要だと思えた部分において、払うコストに見合う利益が本当に見込めるか、という問いです。機能が自分に当てはまっていても、費用対効果が合わなければ意味がない。そこまで確認して初めて、導入を検討する土台に立てます。
これはMEOに限らず、広告代理店でも、チラシ業者でも、Web制作会社でも同じ構造の話です。提案の総量ではなく、「自分の事業に当てはまる部分がどれほどあるか」、そして「その部分で十分な費用対効果が見込めるか」を軸に見る。
ウォーターサーバーで学んだ「投資判断の3段階」
ここで少し個人的な話を挟みます。
以前、引っ越しのタイミングで、引っ越し先の不動産管理会社と提携していたウォーターサーバー業者から営業を受けました。スーパーに水を買いに行く手間がなくなる。身支度してスーパーまで往復する時間、ついでに買ってしまう衝動買いのコストまで考えれば、多少割高でも費用対効果は十分だと感じ、契約しました。
生活は確かに楽になりました。ただ、しばらくして別の業者から浄水型サーバーの提案を受け、改めて費用を比較してみると、僕の生活スタイルや使用量を踏まえると浄水型のほうが費用対効果がはるかに良かった。
それだけではありません。定期配送される重い水をウォーターサーバーまで運ぶ手間、空になったタンクの処分、水の残量を気にしながら次の配送タイミングを確認して消費量を調整する思考負荷——こういった「使い続けるうえでの手間やストレス」が、契約前にはまったく見えていませんでした。コスト面だけでなく、こうした運用上の負担も、後々じわじわと効いてきます。
「最初に契約したウォーターサーバーは水の質は良かったけど、もっとコストを抑えられる選択肢があったし、運用の手間も想定できていなかった」——それを後から気づいた体験です。
このとき僕は複数のことを確認できていませんでした。「費用対効果が本当に合うか」「他の選択肢がないか」、そして「導入後の運用コストや手間がどれほどかかるか」。
これ以来、何かに投資するかどうかを決めるとき、3段階の問いを立てるようにしています。
① そもそも費用対効果が合うか?
提案された施策を導入したとして、売上や集客への貢献が、払うコストを上回るか。ここを最初に考えます。「月数万円払ったとして、それ以上の利益が見込めるか」を、感覚ではなく数字で考える。
② もっとコストを抑えられる選択肢がないか?
同じ目的を達成できる、より安い方法や自分でできる方法はないか。MEOで言えば、Googleビジネスプロフィールの基本設定・写真の追加・投稿の更新など、お金をかけずにできることが実はかなりあります。有料の業者に頼む前に、無料でできることをやり切ってから「それでも足りないか」を判断するのが自然な順番です。
③ そのうえで、導入するかどうかを判断する。
この3段階を踏まずに「良さそうだから」「営業の話が刺さったから」で決めると、後から後悔しやすい。ウォーターサーバーのときの僕は、①すら深く考えずに動いてしまいました。
MEOの営業を受けたときは、この3段階を踏んだことで「今は必要ない」という判断に落ち着きました。
契約前にやるべき「3つの確認」
具体的に何をすればいいか、まとめます。
① 営業が言った「事実」を自分で確かめる
「御社は〇〇のキーワードで圏外です」「競合より口コミが少ない」——営業担当者がデータや現状分析を提示してきたとき、その場で鵜呑みにする必要はありません。会議が終わったあとで、自分で可能な範囲で確かめてみる。Googleマップを開いてみる。数字を確かめてみる。
調べれば分かることは、意外と多い。そしてその確認作業が、信頼できる業者かどうかを見極める材料にもなります。言っていたことが正確だった業者は、それだけで信頼の根拠が生まれます。逆に事実と違ったなら、その時点で判断材料が揃います。
② 「今の自分に必要なものか」を分けて考える
提案全体が良いかどうかではなく、「この中で今の自分に必要なものはどれほどあるか」を考える。
パッケージ提案は業者にとって都合が良い売り方でもあります。必要なものだけを取り出したとき、月々の費用に見合う価値があるかどうかを改めて問い直す。必要な機能が1つなら、その1つだけ安く使える手段がないか探す。
③ 「すぐ決めなくていい」と思っておく
「今月中に決めないと枠がなくなる」「他のお客様も検討中で」——こういった言葉で焦らされたとき、それ自体が判断を曇らせるサインです。本当に良い提案なら、少し時間をおいて考えても消えません。
「今すぐ決める必要はない」と思っておくだけで、冷静な判断ができます。
まとめ
集客の営業を受けたとき、その場で感じた「焦り」や「良さそう」という感覚だけで動くのは危険です。
今回の記事でお伝えしたかったのは、3つのことです。
- 営業が言った「現状」は、自分で可能な範囲で確かめる
- 提案の機能の多さではなく、「今の自分に必要なものがどれほどあるか」と「その部分で費用対効果が合うか」を見る
- もっと安い選択肢がないかを確認してから判断する
これはMEOに限らず、広告でも、チラシでも、Web制作でも、日常的なサービスの営業でも同じ話です。「良い提案に見えること」と「今の自分の事業にとって必要なこと」は、必ずしも一致しない。
その確認を習慣にするだけで、集客にかかる無駄なコストはかなり減ります。
最後に
「今受けている営業の提案が本当に必要なものか判断できない」「今の集客施策が合っているのかもやもやしている」——そんな状況の方がいたら、一度立ち止まって整理してみてください。
僕は沖縄を拠点に、地方・沖縄の中小事業者の集客・マーケティング支援をしています。
この記事で書いたような「押しつけ型の営業」とは対極のスタイルで動いています。最初の相談は無料で、話を聞いたうえで「必要ない」と思えばそう正直に伝えます。「とりあえず話だけ聞いてみる」で十分です。
